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稲谷久志

2018.6.7

稲谷久志

正真正銘の「鱒の寿司」

6月号でお世話になった高田さん宅へ伺い、特製の「鱒の寿司」をごちそうになった。貴重な天然サクラマスと富山の米、富山の笹、富山湾の海洋深層水塩を使った押し寿司である。「砂糖とお酢だけは県外産のものなんですが、味をみてください」と高田さん。


ほどなく、富山の川漁師の家に伝わる真正の「鱒の寿司」が目の前に出てきた。市販品で見る円形の曲げわっぱではなく、大きな四角い枡で仕込むのが伝統的な製法である。北陸の家々でよく使われてきた枡で、一般家庭にあるものより2回りほど大きい。いったん、笹をめくってきれいな鱒の身を撮影させてもらった後、笹の葉ごと正方形に切り分けた寿司を、合掌していただく。


「おおっー!」


予想していたが、やはり、市販の鱒の寿司よりうまい。さすが天然サクラマスだ。市販品は主に養殖のニジマス(サーモン)を使ったもので、基本的にうまいのだが、高田さんの手製にはかなわない、と正直思う。つい、手が止まらなくなり、「もう一ついいですか」と、6センチ角ほどの寿司を、意地汚く5個も食べてしまった。甘酸っぱいシャリ(酢飯)の調整は「父から教わった秘伝の配合」だという。また船頭の高柳さんも手作りなさるようで、こちらは酢を使わない珍しいタイプらしい。各家庭に伝わる独自のつくり方があるのだ。


さて、富山県では6月後半から鮎漁が解禁され、天晴れでも高田さんたちがとる鮎の販売を再開する予定になっている。昨年、購入者の方々から大好評だった冷凍パックである。ちなみに、東京へ戻るたびにいろんな魚売り場へ行き、さまざまな魚の品質や価格を毎月のようにチェックしている記者からすると、神通川の鮎は、笑ってしまうほどお買い得だ。東京で見た鮎の品質とその価格は、「高田×高柳コンビ」がとる神通鮎から、比べようなく劣ってしまう。そもそも、あの品質で、あの価格は高いのではないか? 一方、神通川の鮎があんまり人気になって、バカ売れすると困るのだが、「これを食べずに鮎を語るなかれ」と思う。決して宣伝ではありませんよ。食べなきゃ、損です。


※鮎漁の記事と塩焼きや鮎飯のつくり方は
https://appale.tokyo/hokuriku/lists/2017.08/20170730-1775/

 

記者プロフィール

稲谷久志

稲谷久志

いなたに・ひさし 北陸出身。出版社勤務後、フリーライターに。食と一次産業の現場を泥臭く取材したいと「天晴れ」に参加

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